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【厚底】NIKE vapor fly next%の禁止による中間層への影響

先日世界陸連はトラック競技において、厚底シューズの使用についての規制が2020年7月28日から開始されていることを発表した。規制では、800m以上のトラック競技において厚さ25㎜以下のシューズを使用することが求められる。

 

厚底シューズというのは言わずもがな、NIKEのヴェイパーフライネクスト%やアルファフライである。

厚底に染まった長距離界

去年はランナーでない人達の間でも「ピンクシューズ」などと呼ばれるほど、”厚底”旋風が吹き荒れた。競泳のレーザー・レーサーのように禁止になるのではないかという噂もあったが、禁止が大きく取り上げられた1月においてもシューズが禁止になることはなかった。また、アシックスやミズノ、デサントの他社も厚底シューズの発売を行ったため、”厚底”が禁止される可能性が遠のいたように思われた。そのため公式戦で使用する用途でシューズを購入したランナーも多いだろう。実際、私も大学において長距離をやっているが、2020年2月の時点には、部員の8割がNIKEのヴェイパーフライを所有していた。

 

厚底「ヴェイパー」の威力

厚底シューズの代表格である、NIKEヴェイパーフライネクスト%は多くの中間層ランナーを魅了した。ヴェイパーにはカーボンプレートによる強い反発に加え、高いクッション性能、軽さが備わっている。また、”靴によって走らされる感覚”があり、着地がフォアフッドやミッドフットでない、かかと着地においてもその威力を発揮するのである。

 

この靴の登場によって、フォームが定まっていないような中間層ランナーの走りが大幅に向上した。つまり私のような地方大学の部活ランナーであり、トップランナーではないのだ。実際、私の部内でも確認できたが、中間層同士の練習でヴェイパーを使用する選手とそうではない選手では明らかな差が生じるのだ。靴によって明らかな差がでるのが分かっているために、真面目に陸上をやっている選手はヴェイパーを買う選択肢しか残されていない状況があったと思う

厚底の罪

ヴェイパーの威力が確実なものと認知されるにつれて、試合においてもヴェイパーを履く選手が目立った。日体大記録会では、そのほとんどがヴェイパーを履いていることを確認することができる。また、高校の試合においてもヴェイパーが浸透している。

 

ここで私が問題視したいのは、ヴェイパーの値段である。ヴェイパーは定価で約3万円で販売されており、レーシングシューズとしては高いシューズであると言える。また、他社製品の”厚底”シューズも2万円以上することから、高値が付けられている。

 

”厚底”を履くことによるアドバンテージが認められている状況下であえて「厚底でないシューズ」を履く選手はいないだろう。つまり、勝負に勝つ、または”上”を狙う選手は必然的に”厚底”という選択肢を採ることを迫られるのである。しかし、そのシューズが割高であれば、入手できない者の現れ、勝負の機会が平等であるとは言えないだろう。(特に、私のような学生の中間層ランナーや高校生は、トップ選手のように靴が配給されるわけではないから不利と言える。)しかし、記録のためにと”高級厚底シューズ”を買わなければならないのだ。

”厚底禁止”による一番の被害者は中間層学生ランナー

今回の禁止による一番の被害者は、お金がないのに頑張ってヴェイパーを買った一般学生や高校生ではないだろうか。彼らは、平等な勝負の機会を確保するために高額なヴェイパーを購入したのにも関わわらず、ヴェイパーを履いて試合に出ることができなくなってしまったのだから。私の友人もヴェイパーを買ったものの、コロナの影響で一度も試合に出場できなかったそうだ。

 

レーシングシューズと技術の進歩の関係

私はヴェイパーの開発自体はよいものだと考えている。なぜなら、レーシングシューズとして販売するのであれば、他社製品よりよいものを作り差別化しなければならないからだ。しかし、今回のようにあまりに高性能のため、独占状態に陥ってしまうと”平等”という観点からの規制が入ることとなる。今後も、”厚底”に限らず、技術の進歩による「速く走れるシューズ」が登場するだろう。その時問題となるのが、どこまで技術は競技に介入できるのかということだろう。

 

それとも今回の世界陸連の規制は厚さ25mm以下であれば、技術による靴の改良を認めるということであろうか。